プレスリリース

『デジタルオーバーレイ』に関する見解について

ファシリティジャポン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:イヴ コルニュ)は、デジタルオーバーレイについて、弊社の見解を以下の通り発表させていただきます。

1. 今回の見解の発表に至った経緯

  弊社が開発、提供をしておりますウェブ/デジタルアクセシビリティソリューション『FACIL’iti』(以下、FACIL’iti)について、先日行われました総務省主催のシンポジウムや個人管理のツイッター、ブログで『デジタルオーバーレイに該当する』との発言や投稿がございました。また、昨今この『デジタルオーバーレイ』については、日本だけではなく、欧米でも同様のコメントや投稿がございました。これらのことを踏まえて、FACIL’itiを採用 / 導入してくださっている皆様が今後も安心してFACIL’itiをご利用いただけるように弊社としての公式な見解を発表するに至りました。

2.FACIL’itiとウェブサイトのアクセシビリティ/ユーザビリティの考え方について

 前提として、FACIL’itiを利用してもウェブサイトを利用する100%のユーザーのニーズや課題を解決することはできません。そもそもユーザーの様々なニーズや課題を100%カバーできる単一のソリューションは現在存在しないと考えております。また、WCAG、RGAA、JISといった規格や基準を準拠、達成しても多様性への対応、ウェブ利用時の課題をすべて解決することは非常に難しいです。なぜなら、規格や基準だけではカバーされていないユーザーのニーズや課題があるからです。また、自分のニーズに合わせてブラウザやOSの設定できないユーザーは、規格に準拠したサイトでも多くの課題にぶつかり、快適にウェブサイトを利用できないことがあります。スマートフォンのテキストサイズを自分で設定変更できない高齢者が典型例です。

 弊社はできるだけ多くの人々がより快適にウェブサイトを利用できるように、ソリューションのUIもできる限り簡単でシンプルな設計をしています。そして、規格ではカバーされず取り残されてしまう人々のニーズ(例:読字障害、パーキンソン病や本態性振戦といった運動機能障害など)に可能な限り応えるために、フランスの障害者協会(UNADEV、フランスパーキンソン、APFなど)の協力の下、ユーザーと一緒に開発しました。

 ISO30071で、ウェブサイトはユーザーのニーズに合わせたパーソナライズ化は有効な手段の一つとして推奨されています。ウェブサイトのユーザーの身体的な特徴、環境、ニーズは多様化しており、弊社はウェブサイトでも多様性への配慮は必要だと考えます。フォント一つをとっても、大きい方がよいという人もいれば大きすぎると一つの文字として認識できないという人もいます。明朝体は認識苦手だが、UDフォントは認識しやすい人もいます。このような多様化したニーズに対応したウェブサイトをデザイン、構築することは非常に困難です。

3.欧米で問題視されている『デジタルオーバーレイ』と弊社見解について

FACIL’itiは、昨今欧米で問題視されている100%自動化された『デジタルオーバーレイ』ツールではないと認識しております。

<問題視されている『デジタルオーバーレイ』について>

 昨今欧米において『デジタルオーバーレイ』について一部問題視されているという事実は認識しております。主に問題視されているのは、ツール自体が100%自動化されたものであり、そのツールを利用することでWCAG、RGAA、JISが達成ができる、ウェブサイトのアクセシビリティが100%満たされるという考え方やそれを提唱することが問題だと認識しております。

<弊社ソリューションは問題視されている100%自動化された『デジタルオーバーレイ』ツールではないという二つの理由>

①米国司法省が出した『Guidance on Web Accessibility and the ADA』というガイダンスに『オーバーレイは便利なツールだが、スペルチェックや文法チェックなどの他の自動ツールと同様に慎重に使用する必要がある。』とあります。弊社の提供する『FACIL’iti』は、100%自動化されたツールではありません。約60%を自動化できるアルゴリズムと仕組みを持っておりますが、残りの約40%は、開発チームが1サイトごと、1テンプレートずつ丁寧に確認し、手作業で制作、完成させます。100%自動化したツールを利用した場合、コントラストの低下や、表示崩れが発生することは認識しており、だからこそ弊社は100%自動化せずに、開発チームが作業をすることでこのような問題を回避し、クオリティの担保に努めております。

②『2』でも示す通り、弊社は一貫してWCAG、RGAA、JISといった規格や基準を達成を目的とした開発、提供は行っておりません。規格や基準では取り残されてしまう人々に対して、一人でも多く人が快適なウェブ利用ができることを目的とした補完的なソリューションとしての位置づけを認識、提唱しております。

上記二つの理由から、FACIL’itiは昨今問題視されている100%自動化された『デジタルオーバーレイ』ではなく、また弊社はFACIL’itiについて問題視されているような考え方や提唱をしておりません。

3、さいごに

 弊社は日本でのウェブアクセシビリティの普及と誰も取り残さないデジタル社会の実現に向けて微力ながら日々取り組んでおります。今回、総務省主催のシンポジウムでの発言やブログやツイッターで『FACIL’iti』が問題視されているデジタルオーバーレイだということを発言、発信されている方々は、日本で長らくウェブアクセシビリティの普及のためにご尽力されていらっしゃいました。決して悪意のある発言ではなく、弊社ソリューションに対する一部の認識違いと日本のウェブアクセシビリティ普及とデジタル環境がより良くなるようにという想いからの発言、発信だったのと弊社は理解しております。今後はウェブアクセシビリティの普及と誰も取り残さないデジタル社会の実現に向けて一緒にお取組みさせていただける日を楽しみにしております。


<参考>

ISO30071

Guidance on Web Accessibility and the ADA (米国司法省)

ウェブアクセシビリティとADAに関する手引き(ウェブアクセシビリティ推進協会)

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